皆様、暑中お見舞申し上げます。本当に猛暑です!何とぞご自愛ご健吟下さい。では今月の特選句・入選句選評行きます。
【特選3句】 (31) 青嶺へと迫り出す桟敷吉野建 吉野では、谷に迫り出すように作られた吉野建という工法が見られる。それを青嶺、つまり夏の緑濃い山々に向かって迫り出すと表現したことによって迫力のある一句となった
(98) 推敲は未だ終らず青葉木菟 「夫恋へば吾に死ねよと青葉木菟」橋本多佳子 のように、この鳥には何か神秘的な意味合いを感じる。ホウホウと哀調を籠めて鳴くこの鳥を聞きながら何か思いの籠った文章か句の推敲を進める作者が想像される
(110) 蚕屋は今ただの物置帰省せる 蚕屋、つまり蚕の飼育をする小屋のことである。むっとする桑畑の匂いや稲田のそよぎなど故郷の懐かしさを楽しみに帰省した作者が目にしたものは物置となった蚕屋だったのだろう。無論、季語は「帰省」である
【入選5句】 (20) 通りぬけできる町家や路地凉し 京都などの町家では、課税対象である間口を出来るだけ少なくするため、奥行の長い作りにしてある。そうした家の前に打ち水をし、縁台を置いて夕涼みをする昔ながらの夏の光景が想像できる
(46) さつきまで見えゐしケルン霧走る ケルンとは石を積み上げて山頂などを示す夏の季語である。それを一瞬にして隠してしまう山の霧を詠んだ句である。季語は「夏の霧」と解釈した
(57) 避暑散歩ハンザキの淵覗きもし ハンザキ、つまり大山椒魚の別称である。ハンザキの生息するような山間の渓流を覗きながらの散歩は、さぞや気持ちの良いことであろう。季語は「避暑散歩」
(72) 片陰の意外に多しオフィス街 オフィッス→オフィスと直しましたが身近にあって意外と気づかないことをうまくまとめた句です。確かに都心では街路樹や庇を張り出したレストランなどがあり、陽射しを避けることの出来る場所が多いものです
(77) 通信簿見せ合ふ土手や草いきれ 一学期の終業式の帰り道に、青々と草の茂る土手で友達同士通信簿を見せ合う小学生たちの楽しそうな様子が目に浮かびます
【次点句】 (32) 折々に谷戸の風来る夏書かな (42) 厨事疎かにせず生身魂 (80) 海抜を書き添へてあるケルンかな (101) 志野あれば萩もあるべし陶器市 (128) かなかなにいよいよつのる帰心かな (137) 霊域と碑あり下闇なすところ (145) 細格子続く家並の秋簾
|