今月の投句

(1) 夕菅の村はつ夏の風がぬけ

(2) 天敵のあるがごときに七変化

(3) 屋根や来て腰を上げたり端居夫

(4) 青柿や集落一の旧家とか<4>楠木光雨

(5) 飛魚の飛ぶ音のみの闇に起き

(6) 街中は偽装氾濫よしず張る

(7) 赤き実を選びほうずき市を出る

(8) 闘魚いて二十四時のあかりかな

(9) ネジを巻くごとくに蝉の鳴き始む<5>森田純一郎

(10) 荒梅雨や犬嫌がれど雨合羽

(11) 鬼灯や眼に残る村の空

(12) ひょんの笛空気の洩るる音ばかり<10>小林恕水

(13) 朝顔や明日は解体さるる家<6>村井徒歩

(14) 満天の星の如くに揚げ花火<3>喜見城弘

(15) 距離保ち一糸乱れず鯔の群

(16) 列車ゆく大夕焼に交はりつ

(17) 鉄風鈴にもある値札陶器市<3>角山隆英

(18) 仰天も伏すも死に様夏芝居

(19) テニスコート外に黄菅の佇めり

(20) 通りぬけできる町家や路地凉し<19>小林久美子

(21) 藍甕の蓋夜も外し夏迎ふ

(22) 丹生上社男坂には蔓手鞠

(23) 点と線点と線なす蛍かな<3>花岡よし子

(24) 高千穂に響く神鼓や明け易し<19>石戸澄子

(25) 宮崎のマンゴが届く父の日に

(26) 空蝉のすがりて吹かる葉末かな

(27) 大仏を仰ぎて汗を拭ひけり<6>阪野雅晴

(28) 蓮の葉パラボラめきて風に立つ

(29) 育ちつつ闘魚の色の薄れ行く

(30) 法の庭彼方へ此方へと道をしへ

(31) 青嶺へと迫り出す桟敷吉野建<11>平田冬か

(32) 折々に谷戸の風来る夏書かな<25>古谷多賀子

(33) かほどにも群れてコマクサらしからず

(34) 老鶯の声全身を耳にして

(35) 風鈴の音も売りもの屋台店

(36) 日盛りを知らず貴船に遊びけり<3>黒岩えつこ

(37) 旅人木隊商宿の昔より

(38) 稲妻を見ても平気な飼い犬や

(39) 座すやいな添水の響く詩仙の間 

(40) 風鐸の案内の音や峠茶屋

(41) 日傘さし結城紬を着てをりし

(42) 厨事疎かにせず生身魂<12>山本ヒロ子

(43) 心地よく骨切る音や祭鱧<11>岡本あざみ

(44) 大夕立病む猫の息ひそやかに

(45) 梅の実のすべて落ちても梅雨明けず

(46) さつきまで見えゐしケルン霧走る<6>村手圭子

(47) 雨乞や弘法大師の池見ゆる

(48) 水琴のリズム軽やか梅雨晴間

(49) 山椒魚現るるに騒ぐ川遊び

(50) 紫の風蘭なんと高貴なる

(51) 御製の碑片蔭すらもなかりけり

(52) 木洩日に光る滝径滑り易

(53) 神域を憚るでなし蝉時雨<7>岩田勇

(54) 断崖の岩間に伸びる百合の花<3>本多悠天

(55) 燃え盛る僕の青春夾竹桃

(56) お祭りのクライマッツクス揚げ花火

(57) 避暑散歩ハンザキの淵覗きもし<7>石戸澄子

(58) 炎昼の鳩緩慢に退けにけり

(59) 火の気なき夏炉を風の通りけり 

(60) 朝焼けの雲のおもたき鮎の川

(61) あまたたび鯔とぶ湾の真っ平

(62) 青き香の残る草刈り後に立つ

(63) 農継がぬ子の鍬洗ふ聖五月

(64) 生を享け土に残せし蝉の穴

(65) デパートが好きでおはせる生身魂<3>山本ヒロ子

(66) 七夕や赤や黄色の願ひ事

(67) サンダルの足首細き娘達

(68) とことはの豊のひかりや月涼し

(69) 旅はじめ夫の選びし日傘買ふ<4>若松歌子

(70) 多羅葉の幹ふとぶとと夏の雨

(71) 無住寺の仏の供養草むしる<3>木村山階

(72) 片陰の意外に多しオフィッス街

(73) 槍ヶ岳穂先に行けずケルン積む<6>小林久美子

(74) 柳散る小魚泳ぐやうに散る<7>小林恕水

(75) 青空へ噴水の穂の高あがり

(76) 小さき川小さき橋の蟾の声

(77) 通信簿見せ合ふ土手や草いきれ<5>上原忠

(78) 梶の葉や筆を選びて夜の更ける<5>田中克征

(79) ゆすらうめ実をつついてる鳥たちや

(80) 海抜を書き添へてあるケルンかな<4>古谷彰宏

(81) 親は滝眺め見守る川遊び

(82) 遠くには穂高の峰や鷹澄めり<3>村手圭子

(83) ハンモツク欲しき高原星涼し<6>黒岩えつこ

(84) 老鶯や水占いをしてお(を)れば

(85) 昼顔の咲く垣根越し道を聞く

(86) 目で諭し指鉄砲や火神鳴

(87) 風鈴の絵で吊り忍選びけり

(88) 理髪屋の昼寝の客となりにけり

(89) 風鈴の声に誘はれ夢の中

(90) 遭難碑手を合はせもし登山かな

(91) 咆哮す熊のごとしや雲の峰

(92) ガラス瓶完熟実梅の色よろし

(93) 老姉妹文机並べ夏書かな

(94) 日時計の時刻明瞭炎天下

(95) 身じろぎしゆゑにこぼれぬ蓮の露

(96) 武家屋敷跡一面のクローバー

(97) 本籍の無き故郷に帰省かな<4>堀真一路

(98) 推敲は未だ終らず青葉木菟<6>玉田ユリ子

(99) 朝凪の空飄然と熱気球

(100) 血滴るステーキ食べて暑気払ひ

(101) 志野あれば萩もあるべし陶器市<4>小林久美子

(102) 夕菅の迎える宿や白樺湖

(103) 氷室社は涼しきものと思ひ来し<7>小田ゆき子

(104) 浴衣着て出かけてみるや夕涼み

(105) 雲の峰釣竿肩に男の子

(106) 存続の危ふし会堂雲の峰

(107) 灰色に染まる日の丸炎天下

(108) 蕎麦の泡とばせし父の破団扇

(109) 小暗くも水鏡せるこの泉<4>岡本あざみ

(110) 蚕屋は今ただの物置帰省せる<7>中島葵

(111) 桔梗のひときは高し枯山水 

(112) 野薊や犬吠岬いま怒涛

(113) 揚げ花火次から次へ揚がり行く

(114) 凌霄花遠きに高く五重塔

(115) パソコンに向かふも大儀なり大暑

(116) 駄馬とても駑馬とてもよし茄子の馬

(117) 岸壁に人波寄せて花火待つ

(118) 百年を経て座布団に祖父のセル<3>公江耀子

(119) 崖の上の木苺はみな食べごろに

(120) ふくろうの子がいて里の座禅草

(121) 童謡の詩碑に合ひもし避暑散歩<6>黒岩えつこ

(122) 汗拭いて笑ひ羅漢の前に立つ<4>川東孝行

(123) 自家製と判る玉葱車庫に吊る

(124) 繕いの母に西日のにじり寄る

(125) ひぐらしや百観音に鳴き揃ふ<4>古谷彰宏

(126) 朝顔の今や二階に登りけり

(127) よしず張り街一斉に沈みゐる

(128) かなかなにいよいよつのる帰心かな

(129) 髪洗ふただひたすらに髪洗ふ

(130) 遊船やセーヌの川辺思ひけり

(131) 吾を去らしめぬ沢音山葵生ふ

(132) 夕暮れは黒く見えたる吾亦紅

(133) 外灯の蔭に海路の守宮かな

(134) 汗ひとすじその先端のこそばゆき

(135) 夜の蜘蛛術后の傷の痛みだす

(136) 雲海の国見が丘の霊気かな

(137) 霊域と碑あり下闇なすところ

(138) 大揺れのしぶき落として夏柳

(139) 舌舞ふも軒の風鈴音なさず<3>花岡よし子

(140) 昨夜の雨濁り僅かに川遊び

(141) 朽ちかけし土塀染み入る五月雨

(142) 花槿きのふの花は落ちゐたり

(143) 安居とて山の暮しは変はらざる

(144) ぼたぼたの梅の実つかみ干しにけり

(145) 細格子続く家並の秋簾

(146) 溝草の跡形もなき日照りかな

(147) 子に敬語使ふ母をりカーネーション